平成23年度 水戸地方裁判所見学
9月30日(金)に生徒13名で、水戸地方裁判所を見学してきました。この見学会も今年で3年目になります。
県庁三の丸庁舎で集合後、水戸地方裁判所へと移動し、すぐさま刑事裁判の傍聴となりました。一部の生徒は、裁判所に入ると普段とは異なる雰囲気を感じ、緊張していました。傍聴席についた時には、既に検察官・弁護士が着席しており、しばらくすると被告が、続いて裁判長が入廷しました。被告の手には手錠がはめられており、それが外されるという光景には一層の緊張感を感じている生徒が多く見られました。そして起訴事実の確認、証拠の提出、弁護、被告人質問と粛々と進み、裁判長が判決の言い渡しの日程を言い渡して裁判は終了しました。1時間近くの裁判ですが、あっという間に過ぎてしまいました。
閉廷後、関係する方々が退席するなか、我々はそのまま傍聴席で事務官の方から日本の裁判制度、裁判員制度の説明を受けました。説明を受けた後、質問をする時間がありました。生徒たちは、今見た裁判に関する疑問や日本の裁判制度、裁判員制度の疑問を積極的に事務官の方に質問をしていました。予定していた時間を多少超えてしまいました。その後、先ほどまで裁判が行われていた法廷の見学をしました。
終了後、生徒たちは口々に貴重な体験ができたことへの感想を述べており、今年も充実した見学会になりました。
水戸地方裁判所の関係職員の方々に大変お世話になりました。ありがとうございました。
生徒たちの感想
①裁判所見学の感想
九月三十日、水戸地方裁判所へ見学に行きました。私は、裁判所に行くのは今回初めてで、とても良い経験ができました。
裁判がはじまる前、部屋の中は少し落ち着いている感じでしたが、手錠をし、腰になわを付けられた被告人が入ってきた瞬間、空気が変わった感じがしました。私自身、手錠をつけられた人を初めて生で見たので、その時はすごく驚いたし、今でも強く印象に残っていて被告人の顔が忘れられないぐらいです。
裁判中は、裁判官、検察官、弁護士のそれぞれの仕事が見られました。中でも、私がすごいなと思ったのは、検察官と弁護士です。検察官は、被告人のことをすごく調べているし、一つ一つの質問が的をえていて、すごいなと思いました。弁護士のすごいなと思ったところは、質問で「この質問は、事件に関係するのかな。」と思った質問を、キレイに結果につなげたことです。例えば、「ホテルの予約は実名で、本当の住所を書いたか。」という質問をしている時、正直私は「こんなことを聞いて何になるんだろう。」と思ったけれど、最後の弁護側の「ホテルの予約は実名で、本当の住所を書いているので、この事件は計画的犯行の可能性が低いと考えられる。」という発言を聞いて、本当に感動しました。法廷にいる人は皆、視野が広く、いろいろな所からものごとを考えることができるのだなと思いました。
裁判が終わってからは、裁判所の職員の方からいろいろな話を聞きました。今回の裁判所見学を通して、今まで遠い存在だと思っていた「裁判」を身近に感じることができました。
※感想文中、事件に関する詳しい内容がありますが、省略させていただきます。(担当教員)
②裁判所見学を通して学んだこと
私は、今回初めて裁判を傍聴した。裁判は、原則として公開された法廷で行われ、一般の人々も傍聴することができるが、なかなか、1人では訪れる勇気がなかったのでとても良い経験となった。
実際、裁判は私が先入観として裁判に対して持っていたイメージとは異なる点が多かった。裁判はドラマ等で見るよりも厳かな雰囲気の中で行われ、また、それは教科書や資料集で見るように理論や理屈だけに沿った機械的なものではなく、「人が人を裁く」という緊張感や独特の雰囲気を持っていた。
はじめに、被告人が2人の警察官に連れられて手錠を付けた状態で入廷した。その時、目の前の傍聴席に座っていた私は非難や軽蔑というよりむしろ、大きな衝撃をうけ、状況を受け入れるのに時間がかかった。
しかし、その一方で、被告人は裁判で有罪と決まるまでは、真犯人かどうか分からないから、裁判中、被告人の人権が尊重されていることが分かった。刑事被告人はどんな場合でも、弁護人を頼むことができ、貧困等のために自分で弁護人を選任できない場合は、国が費用を出して弁護人(国選弁護人)を付けることができる。今回の裁判では、この事例だった。実際に今回、弁護人は被告人質問の時、専門用語を用いずにゆっくりと親身な口調で被告人に質問していた。また、被告人が被告人自身に有利になる発言をしたときには、「つまり、○○ということですね。」等と何度も念を押して、より詳しい情報を聞き出していた。
ここで、犯罪は、被害者の自由と権利を侵すだけでなく、社会の秩序を乱し、国民全体に対しての権利を侵害する行為である。そのため、刑事裁判では、国が被害者に代わって原告となり、検察官がその仕事にあたっている。これはまた、被害者が原告になると、犯人を憎むあまり、どうしても訴えが感情的になり、公正な裁判がしにくくなるので、それを防ぐために、検察官が第三者の冷静な立場から、正義感によって訴えているという意味も持つことも分かった。
すべて、裁判は証拠に基づいて行われる。疑わしいだけで、証拠がない場合は有罪にできない、つまり「疑わしきは罰せず」の原則である。また、自白は、有力な証拠ではあるが、自白だけで有罪と決めることはできない。
だから、最後に裁判官が弁護人と検察官からの立証や質問で黙秘権からか、明確にされなかったところや、微妙に食い違う点について被告人に確認した。(例;職場でのトラブルとは何か。等)
私は、今回の裁判所見学を通して、考えたことが2つある。
1つは、絶対に犯罪を犯してはいけないということ。これは、一見常識だが、今回犯罪を犯した後どのようになるのかということを知った。つまり、信用を失い、被害者に迷惑をかけるだけでなく法によって裁かれてしまうということ。裁判の中で裁判官、検察官、弁護人3人に共通したことがあった。それは、被告人に二度と犯罪を繰り返さないための将来の道筋を示していたことだ。そこからも、犯罪は悪であることを再認識した。
2つ目は、マスコミや本などを通してだけではなく、「直接」見たり聞いたりすることが大切だということだ。裁判以外にも言えることだが、特に、裁判に関しては、憲法第76条で、「裁判官は、憲法と法律に従うほかは、誰の指図も受けず、自分の良心にのみに従って、独立して裁判を行う」と示されている。
しかし、これは実際に、私たちが裁判を見に行かなくては、その通りかどうか分からない。さらに、常に市民が関心を寄せることで公正に裁判がおこなわれる環境が保たれることにもつながると思う。そこで、裁判員制度はとても良い制度だと思った。
今回の裁判所見学で学んだことを今後の生活や学習に生かしていきたい。